ビットコインで用いられる暗号技術

クリプト

ビットコイン(Bitcoin)は、サトシ・ナカモトという正体不明の人物またはグループによって2008年に提案された、初の成功した仮想通貨です。その設計には、いくつかの暗号技術が使われています。ビットコインがどのようにして安全に取引を行い、信頼できるシステムを構築しているのか、これらの技術について詳しく見ていきましょう。

1. サトシ・ナカモトの論文について

サトシ・ナカモトは、2008年に「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System(ビットコイン:P2P電子キャッシュシステム)」という論文を発表しました。この論文では、中央管理者(銀行や政府など)を介さずに、個人間で直接取引ができるシステムを提案しました。

このシステムの鍵となるのが「ブロックチェーン」と「暗号技術」です。

ブロックチェーンはビットコインの取引履歴を記録し、暗号技術は取引の安全性やユーザーのプライバシーを守るために使われています。

2. ビットコインで使われる主な暗号技術

ビットコインには、主に3つの暗号技術が使われています。それぞれがビットコインの安全性を支える重要な役割を果たしています。

2.1 公開鍵暗号(Public Key Cryptography)

ビットコインの基本となる暗号技術の1つが「公開鍵暗号方式」です。これにより、ユーザーは自分の資産を安全に管理し、他の人と取引を行うことができます。

公開鍵暗号は、2つの鍵から成り立っています。

– 公開鍵(Public Key):他の人に教えてもよい鍵。ビットコインでは、あなたのアドレスとして使われます。
– 秘密鍵(Private Key)自分だけが知っている鍵。この鍵を使って、あなたのビットコインを他の人に送ることができます。

たとえば、誰かがあなたにビットコインを送りたいとき、あなたの公開鍵(アドレス)に送金します。送金を確認するために、送金した側は自分の秘密鍵を使ってその取引に署名します。

公開鍵暗号の特徴は、公開鍵を知っている人が多数いたとしても、秘密鍵を知らない限りそのビットコインに触れることはできないという点です。

これにより、ビットコインの取引が安全に行われ、第三者に不正に取引を改ざんされることがありません。

2.2 デジタル署名(Digital Signature)

公開鍵暗号を利用したデジタル署名は、ビットコインのもう一つの重要な技術です。これは、取引が本物であり、改ざんされていないことを証明します。

ビットコインでは、取引を行う際に、送金者は自分の秘密鍵を使って署名を行います。この署名は一種の証拠であり、「この送金は確かに私が行ったものです」ということを証明します。そして、受け取った側や他のユーザーは、その署名を送金者の公開鍵を使って検証できます。これにより、送金が正当なものであることが保証され、偽造や詐欺を防止できます。

具体例を挙げると、あなたが誰かに1ビットコインを送りたい場合、あなたは自分の秘密鍵でこの取引に署名します。次に、この署名を含む取引情報がビットコインのネットワークに送られ、他の参加者があなたの公開鍵を使ってその署名が正しいことを確認します。署名が正しいことが確認されると、その取引がブロックチェーンに記録されます。

2.3 ハッシュ関数(Hash Function)

ビットコインで使われるもう一つの重要な技術は「ハッシュ関数」です。

ハッシュ関数は、データを一方向に変換し、元のデータを復元できない形式に変える技術です。

ビットコインでは、この技術を使って取引のデータをまとめたり、ブロックチェーンの整合性を保つために使います。

具体的には、ハッシュ関数は任意のサイズのデータを入力として受け取り、固定サイズのデータ(ハッシュ値)を出力します。
ビットコインの場合、このハッシュ値が一定の基準を満たすように調整する作業が「マイニング」と呼ばれるプロセスです。

例えば、ある取引データが「送金A→B:1BTC」だとしましょう。この取引データにハッシュ関数を適用すると、たとえ少しでも取引データを変えればまったく異なるハッシュ値が出てきます。これにより、取引データが改ざんされていないかを簡単に確認できます。ハッシュ関数のもう一つの特徴は、元のデータを復元することがほぼ不可能なことです。これにより、ビットコインの安全性がさらに高まります。

3. ブロックチェーン技術

ビットコインを支える技術のもう一つが「ブロックチェーン」です。

ブロックチェーンとは、取引の履歴を記録するための分散型のデータベースです。

この技術は、ビットコインの分散型ネットワークにおいて、信頼性と安全性を確保する役割を果たしています。

3.1 ブロックとチェーン

ビットコインでは、取引のデータを「ブロック」という単位でまとめ、これらのブロックを「チェーン」のように繋げていきます。
各ブロックには、複数の取引情報が含まれており、前のブロックのハッシュ値も記録されています。これにより、各ブロックが前のブロックと強く結びつき、一度記録された取引は簡単に改ざんできなくなります。

例えば、ある悪意のあるユーザーが過去の取引を改ざんしようとすると、そのブロックのハッシュ値が変わり、それ以降の全てのブロックのハッシュ値も変更する必要があります。しかし、これは非常に難しく、ビットコインのシステム全体で検知され、改ざんを防ぐことができます。

3.2 マイニングとプルーフ・オブ・ワーク

ビットコインの取引を承認し、新しいブロックを追加するプロセスは「マイニング」と呼ばれます。マイニングは、ビットコインのシステムにおけるセキュリティを維持するための重要な役割を果たしています。

マイニングでは、「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」という仕組みを使います。

これは、マイナー(採掘者)が膨大な計算を行い、特定の条件を満たすハッシュ値を見つける競争です。この計算は非常に難しく、時間とエネルギーを消費しますが、一度解決されると、そのブロックが正当なものであることが全員に証明されます。

PoWの仕組みによって、誰かが不正に取引を改ざんしようとする場合、膨大な計算能力を必要とするため、実質的に不可能になります。これが、ビットコインの安全性を高める要因の一つです。

4. ビットコインの仕組みのまとめ

ビットコインのシステムは、複雑な暗号技術とブロックチェーン技術によって支えられています。サトシ・ナカモトの論文に基づいて設計されたこのシステムは、以下のようなポイントに重点を置いています。

– 公開鍵暗号により、ユーザーの資産を安全に管理し、取引を確実に行うことができる。
– デジタル署名により、取引の正当性を確認し、改ざんを防ぐ。
– ハッシュ関数により、取引データの一意性を保証し、ブロックチェーンの整合性を保つ。
– ブロックチェーンは、取引の記録を分散型で管理し、中央の管理者なしで信頼性を確保する。
– プルーフ・オブ・ワークにより、マイニングプロセスを通じて取引の安全性を高め、不正行為を防ぐ。

これらの技術が組み合わさることで、ビットコインは中央集権的な機関に依存せず、個人間で安全に取引ができるシステムを実現しています。

ICPで用いられる暗号技術について