胎児腹壁破裂について
胎児腹壁破裂は、胎児の腹壁に生じる先天性異常の一種であり、腹壁の開口部から腹腔内臓器が脱出する病態を指します。以下、疫学、診断、鑑別診断、問題点について説明します。
【疫学】
胎児腹壁破裂は、出生前診断の対象となる先天異常の中でも比較的多い疾患の一つです。発生頻度は約1,500〜2,000人に1人であり、多くは妊娠20週以降に診断されます。また、女児に発生することが男児よりも多く、リスクは年齢が上がるほど高くなります。
【診断】
胎児腹壁破裂の診断には、超音波検査が主に用いられます。超音波検査では、胎児の腹壁に開口部があることが確認され、腹腔内臓器が脱出していることも確認されます。また、MRIや胎児心電図など、他の検査法も併用されることがあります。
【鑑別診断】
胎児腹壁破裂の鑑別診断としては、外科的疾患の他、胎児水腫、巨大な臍ヘルニア、胎児腸閉塞症候群などが挙げられます。これらの疾患は、超音波検査やMRIなどで診断されます。
【問題点】
胎児腹壁破裂には、母体と胎児の両方にさまざまな問題が生じる可能性があります。胎児には、腹腔内臓器の脱出による圧迫や損傷、また、出生後には腹壁欠損による生命に直接かかわる重症な合併症が起こる可能性があります。母体には、早産や流産のリスクが高まるほか、分娩時に合併症が生じる可能性があります。分娩方法は経膣分娩、帝王切開いずれにすべきという明確なエビデンスはなく、産科的には経膣分娩トライで良いと考えられていますが、結果的に帝王切開になる症例は比較的認めるようです。