2
「大きいオキナワと小さいオキナワだ」
アキヤマが自分のことを2人に伝えると、自分の隣に座ったロングヘアーの子が言った。戸惑っていると付け加えて向かいに座ったショートヘアーの子が話す。沖縄から3人いて、身長順で大きい、真ん中、小さいオキナワなのだそうだ。シャニーズ風の方は小さい方で、自分は大きいオキナワだという。この2人も数学科の1年生らしく、少し前にアキヤマは2人と一度話していたため声をかけてきたらしい。
「アッキーと、・・・ハルハルにしよう。」
一瞬何のことを言っているのか分からなかったが、すぐに呼び名のことだとわかった。アッキーは良いとして、ハルハルは・・大きいオキナワには可愛すぎはしないかと思ったが、ロングヘアーの子に言われて悪い気はしなかったし、むしろ気持ち距離が近い感じがしたのか、すぐにそれを受け入れている自分がいた。その後なぜかハルハルもいいけどパルパルはどうか、などと女子2人で話が飛躍し、ロングヘアーの子はその後もしばらくパルパルと呼び続けた。
その後他愛もない話を終え、2人が先に授業の準備に戻るため席を立った。アッキーと共に見送り、そのまま男2人は席に残った。
「どっちがいい?」
相変わらず話の流れに追いついていないが、どうやら彼はどっちの女性がタイプかと聞いているようであった。18歳だが女性と付き合った経験はなく、また親しい女友達がいたこともなく、答えに戸惑っていると、アッキーはしょうこちゃんを気に入っていると話し始めた。しょうこちゃんはロングへアーの方で、自分も同じく好意を感じていた。アッキーはしょうこちゃんについてあれこれ妄想めいた推測をならべ続けたが、一方で自分は、これまでこのような会話をしたことがなく、会話自体を楽しんでいた。彼氏いるのか、自分のことどう見えているか、どういう人が好みか、異性に対するこのような話は、18歳であればごくごく当たり前な内容だが、個人的には新鮮であった。実際話を聞きながら、同時につい先程すぐ横にいた彼女のことを思い出し、声には出さないまでも自分自身も思いを巡らせた。華奢でスレンダーの姿、色白で髪は黒髪で長く、前髪は整い、ほんのり頬がピンク色で、やや赤めの口紅が塗られた唇、目は大きく、鼻は小ぶりながらシュッとして笑顔は心の底から惹きつけられた。見方によっては双方が好意を抱いている点で恋敵のようだが、自分自身の話としては現実感はなく、単純に彼を応援したい気持ちであった。現在の状況から一歩一歩進んでいくかもしれない状況への期待を感じた。一人の女性に好意で溢れる男、その話に付き合うだけでも新鮮に感じる男、また単純に話せば話すほど奥深さの深まる彼の魅力、同郷であることも相まって、2人は友人となった。