婦人科腫瘍2

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前回のつづき

② 子宮頸部
③ 子宮体部

いずれも良性、悪性ありますが、問題となってくるのは(当たり前ですが)、悪性です。

子宮頸癌

疫学的には途上国に多いと言われ、原因がハイリスクのHPV (ヒトパピローマウイルス)であり感染症です。

発見した方はHarald zur Hausenという方で2008年にノーベル賞を取ってます(見つけたの自体は1983年)。

感染症であるためワクチンが有効であり、実際複数のワクチンがありますが日本では広まってません。ショッキングな痙攣を起こしているような画像がテレビで流れたことも影響していると思われますが、対して、世界ではワクチン接種は広まっていて、最近には実際に癌を減らしているというデータもあり、日本だけが遅れている状態です(ワクチンを打ってなくても同様の症状があり、関連がないことはさまざまなデータでいわれています)。
→ 最近はやっとでワクチン接種がされてきているよう

子宮頸癌の治療は手術、または放射線治療で、ざっくりいうとI (〜II)期が手術で、それ以上(IVA期まで)が放射線(効果を上げるために化学療法併用)で、IVB期は症状緩和や病勢進行を抑えるための化学療法、となります。IA期でも標準治療は子宮全摘以上であるため、妊娠する能力が失われます。また放射線治療すれば子宮を残せるのがメリットと言われたりしますが、もちろんその通りですが、妊娠はできなくなります。
→ これを勘違いしている、子宮が残るから妊娠できると説明している医師がいて驚いたことがあります。

子宮頸癌の標準手術は広汎子宮全摘術で、これは産婦人科医であれば一番目標にする手術の一つだと思いますが、個人的は、術後の神経因性膀胱が一番懸念されるところです。子宮頸癌で手術をする場合、基本的に根治目的であるため、術後のQOLが非常に重要ですが、神経因性膀胱になると尿意を感じないだけでなく、中には排尿自体ができず、自己導尿がずっと必要になることがあります。近年は神経温存術式で頻度は減っていると思いますが、執刀医としては、非常に気にしていました(もちろん根治が一番です)。
⇨ 長期的なメンタルヘルスという観点から、これは非常に大きな問題であり、実際に精神科医として対応した認知症患者様で過去の頸癌治療以来ずっとフォーリーカテを留置されている方や、そうでなくても排尿障害も影響していたと思われる抑うつ状態の持続の方など、根治を目指す治療であるからこその、より良い合併症予防の追求は大切だと感じます。

放射線治療も有効であり、根治目的、進行癌への出血コントロールや疼痛コントロールに用います。日本は米国と比べると手術寄りで、米国などは放射線治療寄りでしょうか。いずれにしても治ればokですが、放射線治療で根治できない=緩和メイン (例外あり)であり、摘出可能な場合まずは摘出し、病理評価もした上で、追加治療の手がある(追加の放射線治療など)のは、手術のメリットと思います。

いずれにしても、頸癌はワクチンで相当減らせる癌であり、また若年の子や小さい子のお母さんなど社会的にも比較的ショックの大きいことも多く、日本も先進国同様にワクチン接種を本当に勧めていく必要があると思います。(⇨現在少しずつ接種↑)

体癌は次回。