ボンディング障害(bonding disorder)
ボンディング障害とは
わが子をかわいいと思えない、わが子(胎児を含む)に対する陽性感情の欠如あるいは強い陰性感情を持つ状態をボンディング障害(bonding disorder)と呼ぶ。
周産期メンタルヘルスの重要性で紹介したように、産後うつから子殺しに至るcaseが存在
一方で、

うつ病・PTSDがある親のほうが子への虐待を行いにくく, 被虐待体験のある親が自分の子どもに虐待を行うのは,うつ病・PTSDが存在しない場合に限られていたという報告がある。
児童虐待において親の「抑うつ」だけに着目するのは,“木を見て森を見ず”ということらしい

この論文によると、児童虐待をしてしまう親の危険要因として
「怒りの感情と過剰反応」
不安,抑うつ,精神疾患はそこまで影響を認めず,むしろ重要なのは,
「親が子を問題だと認識すること」
「家族葛藤」
「家族凝集性の低さ」
「家族葛藤」
「家族凝集性の低さ」
産後の抑うつとボンディング障害の相関を示す研究は数多く報告されているが,抑うつとボンディング障害の因果は明らかでないよう
実臨床において
先行するボンディング障害に続いて,二次的に気分障害を生じるケースが存在 → 親子・家族の関係や子どもの成長・発達に悪影響を及ぼす → お母さん本人の心理的な苦痛を伴う体験 → うつ病やその他の精神疾患以上にボンディング障害の治療は重要
しかし,ボンディング障害には明確な診断基準がない上に,確立された治療法も存在しない。
現時点における治療
行動療法的な、カンガルーケアを中心とした育児支援やペアレンティングのトレーニングを行い,同時並行で個別の心理療法,家族心理療法を行うことが重要。
さらに多職種連携を基本とする社会的資源を活用し,個々の状況に合わせたアプローチが必要である。
産後うつもあればもちろんその治療も必要。
さらに多職種連携を基本とする社会的資源を活用し,個々の状況に合わせたアプローチが必要である。
産後うつもあればもちろんその治療も必要。
ボンディング障害が子どもの養育環境に悪影響を及ぼすことは明白 → 短期間で親子関係が改善するよう,発見された時点から集中的に治療 → 産後5日目の「赤ちゃんへの気持ち質問表」によるスクリーニングの陽性者は,cut-offを3点/4点とした場合に,実に32%と、まれではない。 → 一方で,重度の場合、子どもにとっての最善の利益を優先し,里親制度や特別養子縁組など,社会的養護を検討する必要 → 臨床的には子どもが1歳の誕生日を迎える前に結論を出すことが望ましい
親と子を離さないこと
親と子を離さない,それが真の意味でのボンディング障害の治療である
ボンディングは親と子が相互に影響し合う関係性の中で育まれるものである → したがって,母子分離の状態ではボンディングの改善は期待できない → 長期間にわたる母子分離は,子どもへの否定的な感情をさらに強める可能性 → 「養育を放棄した」という自責感を強め,自尊感情を低下させる可能性 → パートナーへの支援は不可欠。家族全体が治療の対象。