なんくるないさ

すべての分娩で、帝王切開についての同意書の説明を

medical

全ての分娩が帝王切開になる可能性がある

バースプランは様々です

期待に添いたいです

ですが、突然、帝王切開になる可能性があります

分娩中に限らず、定期外来のエコー中やモニター中にも起こりえます。
過度に不安にさせたいわけではなく、現状日本のお産は そう ということ。

妊婦さんは誰しもが、緊急帝王切開術をうける可能性がある

すべての女性が「自然」な分娩を希望する

現在では病院の分娩台でのお産が多いですが、少し(とはいえ昭和の中頃くらい)前までは家での出産が普通でした。

この変化に伴い、母体死亡は激減しています(周産期メンタルヘルスの重要性)。

医療という点では良いですが、その後のお母さんの人生、まで十分に考える必要があります。

緊急帝切は産後うつのリスク

帝王切開または経腟分娩を計画している女性の出産に対する満足度を明らかにしようとした研究
帝王切開を計画している女性は、経腟分娩を計画している女性よりも良好な出産経験を報告していたが、その一因は計画外の帝王切開に関連する満足度の低さであった。
緊急帝切は満足度が低い

これをふまえた日本の助産師さんの研究

出産満足度でEPDS得点に有意差
帝切での出産満足度と産後早期のうつ傾向には関連があることが示唆?
上記研究では,緊急帝王切開の場合,予定帝王切開に比べ満足度が低いことが報告されたが,本研究では,この2群間に有意差が認められなかった。
その理由として,日本とトルコにおける帝王切開の入院期間の長さの違いと,産前・産後に提供されるケアの違いが挙げられている。

次は日本の大きめ研究

89,954人の女性が対象
産後1ヶ月と6ヶ月の時点でそれぞれ3.7%と2.8%が産後うつ(PPD)
非介助経腟分娩と比較して帝王切開(CS)は1ヵ月後のPPDとわずかに関連していたが、6ヵ月後のPPDとは関連なし
ORはそれぞれ1.10(95%CI、1.00-1.21)および1.01(95%CI、0.90-1.13)
1ヵ月時のPPDとの関連は産前産後の心理的苦痛を有する女性において明らかであった(調整OR 1.15;95%CI、1.03-1.28)
観察された関連は乳児への授乳方法で調整すると減少した。
結論 妊産婦に産前産後に心理的苦痛があり、CS分娩を受けた女性は、PPDをモニタリングする対象

日本の精神科からの報告

36,662人の初産婦と45,878人の多産婦を含む合計82,540人が対象
母乳育児、結婚、非就労の要因は、多胎児の方が初産婦よりも高かった。
母子絆尺度日本語版(MIBS-J)の総得点は、多胎児よりも初産婦の方が高かった(悪かった)(総得点の平均:1.129対0.897、p<0.001)
プリミパラの母親はマルチパラの母親よりも怒りや拒絶のスコアが高かった。
帝王切開(CS)の既往のない多胎児の母親のみを分析したところ、MIBS-Jスコアは経腟分娩の母親よりも帝王切開分娩の母親の方が高かった(p = 0.038)。
limitation
自己報告式のボンディング尺度
母児の結合に異なる影響を及ぼす可能性のある選択的CSと緊急CSを区別しなかった結論
初産婦は多産婦に比べ、分娩様式にかかわらず母子結合が悪い帝王切開分娩そのものは母子結合にほとんど影響を与えないようである。

これだと帝王切開別に影響しない?

そこで海外の文献

nは少ないですが、、
母親166人のうち、160人が追跡調査に回答(96.4%)
選択的帝切(ELCS) 97人(97%)、緊急帝切(EMCS) 63人(95%)
EMCSの20人(31.7%)がPTSDを、9人(14.3%)がプロファイルを有していた。
ELCSは1名(1%)がPTSD、4名(4.1%)がプロファイルであった。
早産、新生児集中治療室(NICU)入室、母乳育児の欠如、パートナーからのサポート不足などの危険因子を追加したEMCS後のPTSD有病率が高いことが示された。
緊急C/Sに、早産、児の入院、母乳育児欠如、サポート不足が加わると、C/Sがトラウマになる可能性
危険因子
分娩計画が尊重されなかったこと(aOR:2.85、95%CI 1.56-5.21)
選択帝王切開分娩(aOR:2.53、95%CI 1.02-2.26)
緊急帝王切開(aOR:3.58、95%CI 1.83-6.99)
新生児の新生児中間ケアユニットへの入院(aOR:4. 95、95%CI 2.36-10.36)
集中治療室への入院(aOR:2.25、95%CI 1.02-4.97)
退院時の粉ミルク栄養(aOR:3.57、95%CI 1.32-9.62)
言葉による産科的暴力(aOR:5.07、95%CI 2.98-8.63)
精神感情的産科的暴力(aOR:2.61、95%CI 1.45-4.67)
さまざまな因子がPTSDのリスク
合計17,189の論文が同定、208本の全文が適格かどうか評価、149の論文が除外、66の論文が系統的文献レビューに含まれた。
異質性の性質上、メタアナリシスは不可能
結論 
EmCSは、特に心的外傷後ストレスにおいて、女性のいくつかの心理社会的転帰に悪影響
EmCSの数を最小限に抑えるための工夫は重要
緊急帝王切開術はPTSDリスク

とりあえず目にとまった論文を紹介しました。
impact factorなど気にしてないのでご容赦を。

産後うつの方の中に、緊急帝王切開がトラウマになっている方は存在

これはまぎれもない事実です。
実際、周産期に関わる方は、心当たりは多々あると思います。
完全に予防は不可能です。

緊急の程度、前置胎盤の大量出血や胎児の心拍低下のgrade Aなどの場合、その時に選択の余地はなく進みますし、母児の状態からは、後の精神的な影響へ配慮する余裕はありません。

そういった意味ではある程度前もって理解しておくことが重要だと感じます。

23-24週を過ぎたら、分娩方法の説明の中で、ルーチンとして帝王切開術の具体的な説明をしておくことが必要だと思います。

もちろん施設によっては行っているかもしれません。
簡単に触れていることは多いと思いますが、より手術を行うことを前提に話してあげるべきですし、妊婦さんもその可能性が避けられないことを受け入れるしかありません、通常は。周産期の医療者に悪気はありません。
トラウマになると、その後の人生、ずっと影響する可能性があります。
子供への影響もありえます。

まず出来ることとしては、全例に帝王切開術同意書なのかな、と思います。