婦人科腫瘍 1

otherside

婦人科腫瘍って何!?

多分医者でも分からないヒト多いです。

検診だとか婦人科受診して、「腫瘍があって・・」なんて言われたらもう 「どうしよ・・どうしよ」ってなりますよね。

なので、婦人科腫瘍について、ざっくり説明します。

腫瘍、と聞くと驚かれる方も結構いらっしゃいますが、要は細胞が通常より増殖しているのが腫瘍で、悪くないやつはイボのような良性のもの、悪いやつはガンです。

イボは皮膚の表面でおっきくなりますが、それだけです。邪魔だったり見た目の問題はありますが、基本的に命には関わりません。

一方で、

ガンだとその細胞の一部が身体の中に入って正常な細胞を壊したり、血管を通じて身体の中を移動して、別の場所でそこの正常な細胞を壊したり、身体の正常な機能に攻撃し出して、最終的には命に関わります。

婦人科腫瘍の分類

① 卵巣由来の腫瘍
② 子宮頸部由来の腫瘍
③ 子宮体部由来の腫瘍

上の3つがよくある婦人科腫瘍で、その他、腟や外陰、卵管、腹膜などに由来するものも婦人科腫瘍での治療対象です。

①卵巣腫瘍

卵巣由来の腫瘍には、良性、悪性に加えて、境界悪性というカテゴリーのものがあります。

良性卵巣腫瘍

若年から高齢者まで幅広く認めます。

基本的に良性の卵巣腫瘍は、生命に関わることは稀で、正直放置も選択肢です。

ただし、卵巣という臓器がお腹の中でぷらぷらぶら下がっているため、時折水風船のような卵巣腫瘍がグルンとねじれてしまい、そうなると卵巣にいく血管が捻れて血がいかなくなってしまうことで激痛を起こしたりしちゃいます。→ 茎捻転(けいねんてん)ってやつです。

茎捻転は典型的には悶絶して横たわってストレッチャーなどでくるので、その場合は緊急で手術でねじれを治し、腫瘍を摘出します。

茎捻転の問題は、しっかり捻れたままで時間が経っていると、卵巣が虚血で壊死してしまうことです。
通常は手術開始時点では真っ黒なってしまった卵巣も、ねじれを解除し腫瘍をとっている間にピンク色ないしある程度色が良くなってきますが、そのままの場合は、残念ながら卵巣も含めて摘出を考慮することもあるため、茎捻転は基本すぐ手術が良いです。

でも実際はねじれが中途半端だったり、緩んで捻れてを繰り返していてはっきりしないようなこともあり、典型的な激痛持続→手術の方が少ない印象です。

またまれには腫瘍が破裂することで、お腹いてーとなることもあります。

ある程度おっきくなると手術を勧められるかと思いますが、その場合は担当の先生と相談して、やるやらないは相談になります。
良性なので、すごく大きくなることもあり、画像をみて、なんで気づかないのってレベルの大きさの卵巣腫瘍になっていることもあります。

今だと腹腔鏡手術という、おへそや下腹部数箇所に小さな傷でやってもらえるので、従来の開腹よりは気軽に考える人もいるかもですが・・・。腹腔鏡手術は低侵襲手術ではありますが、手術であり合併症のリスクがゼロでない点やおへその形が変わる可能性など本人としては結構大きいかもしれない術後の状態もあり、小さいものに関しては経過みてもいいのかな、と思うことはあります。とはいえ、妊娠を契機に捻転することもあり、消えない腫瘍(成熟嚢胞性奇形種、脂肪や髪、歯、皮膚などが含まれる)については予定を組んで手術を検討した方が良いかと思います。

境界悪性卵巣腫瘍

低悪性度の癌という感じですが、実際は1期がほとんどで再発例は少ないです。中には再発を来して生命に関わることもありますが、ガンと比べると明らかに少なく、標準治療が癌と同じ扱いというのは、若年層においては、ちょっとやりすぎな印象です。また晩期再発の可能性が指摘され、治療後のフォローアップ期間が長くなるのは、患者さんとしては負担になるのかなと感じます。

個人的に、未閉経の症例で、術中迅速で境界悪性で卵巣癌に準じた治療を行い、術後にホルモン補充を開始しましたが飲み薬も貼り薬もあわず、術後の症状に難渋したことがありました。そのようなケースを考慮すると縮小手術、具体的には腫瘍がある側の卵巣は一緒に摘出は仕方ないですが、健康な側の卵巣を残すという選択肢をより念頭に置く必要があります。

ただしここが卵巣腫瘍の難しいところで、一般的な腫瘍と異なり、基本的に術前診断が画像診断であることや、術中迅速と最終診断が異なる可能性、なども考慮すると、悩ましいです。今はいろいろ変わっているのかもしれません。

悪性卵巣腫瘍

卵巣癌がほとんどで、まれに悪性胚細胞腫瘍があります。

卵巣癌は婦人科癌の中ではとにかく悪く、1期で根治手術±追加治療で根治を目指せますが、がん検診で見つけるのが難しい腫瘍(そのため卵巣癌健診はありません)で症状が出る頃には進行癌、3期以上になっていることが多く、抗がん剤が著効してもいずれ再発することが多いです。最近は分子標的治療薬など高価な治療が次々に保険適応になって治療の選択肢が従来より複雑になっている印象ですが、いずれにしても、卵巣癌、特に進行卵巣癌は根治が難しい腫瘍です。

一方で、悪性胚細胞腫瘍は非常に抗がん剤が効く腫瘍です。yolk sac tumorという、過去にはどれだけ拡大手術をしても予後不良であったものが、また10-20代など若年に多い悪性腫瘍が、抗がん剤で根治を目指せる、などは非常に達成感を感じていました。転移巣が残っていても抗がん剤治療で根治を目指せます。悪性胚細胞腫瘍と絨毛癌は非常に悪い腫瘍ですが、抗がん剤がすごく効きます。

まとめ

卵巣腫瘍は卵巣から出てくるイボのようなもの。
良性であれば様子みるのも選択肢だが、中にたまるものによって、またサイズによって、手術も検討。
境界悪性はちょっと悪いからしっかり腫瘍がある側は摘出。
悪性は主に癌で、I期は手術で根治できるが画像診断外れることも、でも進行癌はなかなか厳しいので、早めの治療が良い。

悪性胚細胞腫瘍と絨毛癌は抗がん剤がすごく効く、すぐ手術で病理確認して、合併症起こさずすぐに抗がん剤治療