なんくるないさ

妊娠中の薬

medical

妊娠中にくすり飲んでいいのかな?
いやいや、やばいっしょ!?
でもなんでやばいんだっけ!?

その辺の話を、大まかに説明しようかと思います。

妊娠中の薬

妊婦の高齢化(一応35歳以上はそう言われちゃう。。)や慢性疾患の治療法の向上で、薬物治療を要する妊婦が増えています

しかしサリドマイドなどの奇形児の記憶から、妊婦への薬剤投与は危険というイメージが、未だに医療者でも強いのが現実である。
 サリドマイドによる先天性の四肢異常

ですが、実は
多くの先天異常は染色体異常や遺伝子異常が主で、薬剤が原因のものは数%程度といわれています。

とはいえ、薬で奇形は起こるんだよね。。

薬が赤ちゃんに影響する時期

shionogi

① 妊娠の初期、1か月以内くらいは、all or noneといってまったく影響ないか、あれば流産という感じ。
② 4〜8週くらいの器管形成期、ここが最もくすりが赤ちゃんに影響する時期です。ただこの時期って、なかには妊娠に気付いていない妊婦さんもいたりして、実はお薬のんでいることも。。。
③ それ以降は奇形は減るけど、赤ちゃんへの影響はありうる時期で、薬によっては注意が必要。

やばっ、薬飲んでたけど。。。偶発的曝露について。

① 急性
よくあるのはこっちで、風邪やアレルギーなど。
たぶん多くの妊婦さんが少し前に心当たりがあれば不安でいっぱいに。
多くの場合は問題ないことが多いです。
② 慢性
本当は妊娠にむけて薬を調整した上での妊娠がいいんでしょうけど、実際のところ計画外、できちゃったは普通に多いですよね。

その場合は、まず絶対にやめてほしいのはご自身の判断で急にやめちゃうこと。かかりつけの先生や産科の先生に必ず確認しましょう。

妊娠中に薬を飲む場合、クスリのリスクがざっくり分類されています。
・FDA分類オーストラリア分類(ADEC)

FDA分類


実は2015年までで今は使用されていませんが、よく使われていたものなので紹介。
1979年に、妊娠中に使用した場合に先天異常を引き起こす可能性を示す5つのリスクカテゴリー(A、B、C、D、X)を制定。

カテゴリーA
適切かつ十分に管理された研究により、妊娠初期における胎児へのリスクが証明されていない(妊娠後期におけるリスクの証拠はない)
例:レボチロキシン、葉酸、リオチロニン
カテゴリーB
動物生殖試験で胎児へのリスクは証明されておらず妊婦を対象とした適切かつ十分に管理された試験もない
例)メトホルミン、ヒドロクロロチアジド、シクロベンザプリン、アモキシシリン
カテゴリーC
動物生殖試験で胎児への悪影響が示されており、ヒトでの十分な対照試験はないが、潜在的なリスクにもかかわらず、潜在的なベネフィットが妊婦への使用を正当化する可能性がある。
例)ガバペンチン、アムロジピン、トラゾドン
カテゴリーD
ヒトを対象とした治験または販売経験または試験から得られた有害反応データに基づくヒト胎児リスクの肯定的証拠があるが、潜在的なベネフィットが、潜在的なリスクにもかかわらず妊婦への使用を正当化する可能性がある。
例)ロサルタン
カテゴリーX
動物またはヒトにおける試験で胎児異常が証明され、および/または治験または販売経験からの有害反応データに基づくヒト胎児リスクの肯定的証拠があり、妊婦への使用に伴うリスクが潜在的ベネフィットを明らかに上回る。
例)アトルバスタチン、シンバスタチン、メトトレキサート、フィナステリド

Aが良くてだんだんリスクあるなら、Aのクスリ飲めばいいのね、って感じですが。。

Aなんてないし。。。
実際のとこは C くらいであれば必要あれば普通に飲んでいる感じでしょうか。

妊婦に原則禁忌と言われるバルプロ酸なんかも、実際は原疾患のコントロールのために必要な場合は服用を継続し、特に赤ちゃんに異常なく分娩となっているケースはいくらでもあります(もちろん可能な限り、妊娠前に他の薬に置き換えたり、それが難しければ減量が望ましいです)。
妊娠中に抗がん剤治療をすることだってあり、少なくとも新生児の段階では明らかな異常なく生まれることの方が多いです。
FDAカテゴリーは、医療者のカテゴリーへの依存や,十分な情報にもとづかない臨床的意思決定につながる可能性が懸念され、2015年6月に廃止となり、具体的な安全性とリスク評価を記述形式で添付文書に個別に記載するように義務付けたようですが、大まかな分類としては理解しやすかったように感じます。

ということで、現在もおそらく使用されているもう一つのオーストラリアの分類も紹介しておきます。

ADEC

2つの分類の比較も

ちょっと疲れてきたと思うので、まとめ

・クスリでの奇形は思っている程多くない
・大まかなリスク分類があるが、必要なクスリは飲み続けることが大切 (勝手にやめない方が良い)
・一部、やめるべきクスリもある → 主治医に相談

多くの禁忌薬は主治医が止めてくれると思うので、今回は妊婦さん自身でも注意が必要なお薬、市販薬を紹介して終わります。

NSAIDsはやめておこう





もともと生理痛などでこのような薬を飲んでいて、妊娠中の頭痛なんかで痛み止めが必要な場合は、その持っている薬は飲まずに、主治医に相談しましょう。