なんくるないさ

クエチアピン

medical

クエチアピンについて

一般名は Quetiapine Fumarate
薬効分類名は 抗精神病剤

FDA基準 C
Hale分類 ?

妊婦さんや褥婦さんの場合、衝動のコントロールや不眠に対して

第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)のひとつで、色々な受容体に作用するため、MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬)と呼ばれます。

日本での適応 統合失調症 
アメリカだと
統合失調症
双極性障害のうつ状態 
双極性障害の躁状態 
双極性障害の維持療法 

と、適応が広がります。

抗精神病薬のため、基本は抗ドパミン作用による幻覚や妄想といった陽性症状への効果が期待されますが、実際のとこはマイルド(弱い)。

一方で、意欲減退や感情鈍麻などの陰性症状認知機能の改善、気分の安定などにも効果があることがわかっていて、そのために米国のように双極性障害に対して用いたり、はじめに挙げた衝動性のコントロールや不眠にも効果を発揮します。

クエチアピンの作用機序

ざっくりいくと、ドパミンとセロトニンを抑えることで効果が期待できるようです。

中脳辺縁系を抑えることでの陽性症状の改善
・一方、他の脳の部位ではドパミンを抑えるセロトニンをブロックすることで、ドパミンの作用を高めて陰性症状に効果あり。

なんだかすごい都合の良い作用機序です。

この都合の良い作用機序を持つ抗精神病薬を非定型抗精神病薬と呼び、副作用が少ないために近年よく使われるようになっています。

その他、クエチアピンでは、抗ヒスタミン作用や抗α1作用による効果も良い点です。

クエチアピンの副作用

鎮静作用による眠気、こちらはメリットの反面、デメリットにもなりえます。
高血糖、体重増加。妊娠中は特に妊娠糖尿病へ影響する可能性があり、その場合は継続は難しくなるかもしれません。ですが妊娠糖尿病さえなければ、良い薬のひとつだと思います。

妊娠中の内服による影響

N=4221とN多めのアメリカの論文。先天異常発生率は4.31%aRR(調整相対危険度)は1.01[0.88 to 1.17] とリスクの増加はなし
N=2618のフィンランドの論文も同様。先天異常4.93%で、aOR 0.85[0.64 to 1.12]

その他、リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾール含め、第二世代抗精神病薬については、これまで明らかな催奇形性の報告はないよう。

耐糖能異常・妊娠糖尿病(GDM)

MARTAではセロトニン2cH1受容体遮断による食欲亢進、体重増加や高血糖などの副作用が特徴的

GDMの診断になると、妊娠中頻回の血糖測定、インスリン注射、入院が必要になることもあり、高血糖をきたす場合は妊娠中は変更が無難と思われる。

神経発達への影響

統計学的に有意差はなしという報告

関連あり、ただし母親からの遺伝の可能性の調整なし→遺伝の可能性?

新生児不適応症候群

実際問題となるのはこちらである。
胎盤経由でベビーに薬物離脱や錐体外路症状を来しうる。
いくつかの報告で、分娩まで抗精神病薬を使用していた場合に、15%程度に生じうる。

ただこれらはあくまで一過性のもので、自然回復することが多く、長期予後への悪影響は確認されていない

そのため、出生後に注意を要するが、これを懸念しての薬剤の中止は勧められない

妊娠前より統合失調症や双極性障害で服薬していた場合に中止はデメリットが大きい+妊娠中の精神症状においては、母体の精神状態の安定を図るための第二世代抗精神病薬の内服は許容されると考える。

授乳期

Hale分類では「?」となっているが、RID 0.02-0.1%と乳汁移行性は低くクエチアピン400㎎/日以下の場合は、母乳中濃度は低く、乳児に有害事象は認めなかったという複数の報告がある。

クエチアピンについて

構造式

薬物動態

クエチアピンは1.5時間ほどでピークになり、3時間弱で半分の量になるということ

1日2~3回の服用によって、効果が一日安定するといわれる。

開始用量:50~75mg
維持量:150~600mg
用法:1日2~3回
最高用量:750mg

効果のピークが早いため、不安や不眠に対して効果は比較的すぐに認められる

おまけ

クエチアピンの徐放製剤として発売されたビプレッソ徐放錠

クエチアピンは統合失調症だけしか適応が認められておらず、双極性障害の治療薬としては適応外使用であった。
厚労省からも医療上の必要性が高いとして開発要請が2010年ごろからなされて、2017年に双極性障害のうつ状態の治療薬としてビプレッソ徐放錠が承認された。
有効成分はクエチアピンであり、作用時間に応じて使い分けができる。