広汎子宮全摘術

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こんばんは。

今日は婦人科の手術で一般的だけど難しい広汎について。

産婦人科医が一番する手術は帝王切開術で、これは基本です。

産婦人科医になったらまず習得したい手術です。
ただ、実際は帝王切開は実は難易度はものすごい幅があって、大変なものはものすごい大変で難しい。

その次、というわけではないけど、一般的なのが単純子宮全摘で、産婦人科専門医とる上で、経験が必要な手術です。
産科で大量出血という場合に母体救命のために必要な手技でもあり、そういう状況でもできる術式が腹式単純子宮全摘術です。

子宮の摘出方法は単純子宮全摘、準広汎子宮全摘、広汎子宮全摘の3つに分類されます。

ざっくりな説明としては、

単純全摘は子宮がとれさえすればすれば良い、分娩時の大量出血でも摘出可能な術式という感じで、安全に子宮本体がとれれば良いという術式です。
準広汎は、これは施設によって切除ラインが異なる可能性がありますが、子宮をかじらずに少しマージンつけてしっかりとるという感じ。
そして広汎は、子宮頸癌など子宮を骨盤内で支持する靭帯をしっかり骨盤側で切除することで、十分なマージンをつける手術で、子宮頸部に悪性腫瘍がある場合、すなわち主に子宮頸癌の術式です。

問題となるのは、発生の関係で、尿管が子宮頸部の側方を支持する基靭帯を貫くように走行しているため、基靭帯をしっかり切除するためには、尿管の前方を処理して、尿管を外側に遊離し、再度後方の組織を処理する必要があります。

骨盤深くは静脈叢などが発達してることもあり、大量出血することもある手術ですが、婦人科の手術の中では解剖の理解が本当に重要な手術であり、達成感のある手術です

最近は婦人科腫瘍専門医の必須要件でもあり、産婦人科専門医取得して修練医を宣言した若いDrも執刀する機会が増えていると思いますが、実際、手術の責任者として入ると考えると、十分できるといえるまでは、なかなかな経験が必要な手術だと思います。

広汎子宮全摘で主治医として術後一番気になるのが、排尿障害です(もちろん再発しないがさらに大事ですが)。

癌は治ったけど、ずっと自己導尿が必要になりました、っていうのはなかなかな生活への負担であり、避けたい術後合併症です。最近は神経温存術式を行う機会が多いですが、しっかり残したつもりでも残尿が残ったり、それこそ悪性度の強い組織で神経温存しなかった場合でも自己導尿をすることで残尿が残らない場合もあり、非常に悩まされることがありました。

広汎といえば、腹腔鏡 vs 開腹 という議論が続いています。

米国は腹腔鏡が予後不良というデータに基づき開腹に切り替えている一方、日本は腹腔鏡を継続している施設が多いのは不思議です。一部のスペシャリストの腹腔鏡は大丈夫かもしれませんが、そういう結果が出ている以上は個人的には悪性腫瘍でもあり開腹した方がいいと思っています。少なくとも、明らかに腹腔鏡が予後不良というデータは提示した上で腹腔鏡での広汎はすべきと思います。

広汎は若い方に対しては卵巣温存できたり、放射線治療を選択した場合の周囲組織への影響を避けられる点、万が一再発した場合に放射線治療という武器を残せる点で、有用な手術だと思います。

ということで、広汎のざっくりな印象でした。