なんくるないさ

トラウマの基本

medical

トラウマについて

60.7%

この数字は、何の割合を表しているでしょう?

何らかのトラウマ的出来事の体験がある人の割合です

多いような、とはいえ、みんな何かしらありますよね。それでは、

1.3%

これはどうでしょう?

こちらは、PTSDの生涯有病率 です。

そして、1年以内のPTSDの有病率になると

0.7%

といわれています。

トラウマの定義

せまい意味:危うく死ぬ、重傷を負う、性暴力 
ひろい意味:身体的、感情的に有害

トラウマで引き起こされる3つの反応

1 Fight 闘争
2 Flight 逃走
3 Freeze 凍りつき

Fight Flightは交感神経が高まった状態
Freezeは闘争、逃走ができない子供などで危機を乗り切るためにおこるより原始的な反応

トラウマの自然経過

トラウマの結果、PTSDになると思われているが、実は様々です。

PTSDよりもうつ病になる人の方が多い

そして、ACEsが統合失調症に関連することも有名

ACEsって?

Adverse Childhood Experiences でACEs

子ども期の逆境体験のこと

広い意味のトラウマの代表例です。

やばい家の子どもね、、、って思われる方も多いと思いますが。。
実際の項目としては

両親が離婚や別居
問題のある飲酒習慣の人と同居
経済的に苦しい
学校でいじめ ・・・

など、なんだかありふれている内容。


CDCから引用。
ACEs、さらに最近だと貧困や母子家庭などのリスク因子が、様々な疾患やearly deathに影響しているということを表しています。

様々な疾患へのACEsの報告があり、それに対して米国では、政府や自治体でも様々な対応がされています。

一方、日本では?

1年以内有病率から推定する患者数からすると、実際診断されている割合

1/50-100!!!。。少なっ
過少診断です

一方、うつ病は推定されてる患者数より多く診断されており、本来PTSDと診断されるべき人がその他の病名で通院、または受診していない患者さんが多いと推定されます。

PTSDの診断基準(DSM-V)

A.実際にまたは危うく死ぬ、重傷を負う、性的暴力を受ける出来事への、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の形による曝露
1.心的外傷出来事を直接体験
2.他人におこった出来事をじかに目撃
3.近親者または親しい友人に起こった出来事を耳にする。家族または友人が実際に死んだ出来事または危うく死にそうになった出来事の場合、それは暴力的なものまたは偶発的なものでなくてはならない。
4.心的外傷出来事の強い不快感をいだく細部に、繰り返しまたは極端に曝露される体験をする(例:遺体を収集する緊急対策隊員、児童虐待の詳細に繰り返し曝露される警官)
注:基準A4は仕事に関連するものでない限り、電子媒体、テレビ、映像、または写真による曝露には適応されない。

基準4は心当たりがあるなあ。。

そもそもトラウマって

PTSDという概念がでてきたのは、よくベトナム戦争のあとといわれます。

ベトナム戦争で家族を失った孤児とかね、、、と思いきや
実はそこへいった米兵、つまりある意味加害者側の、その後のメンタルの問題が問題になってできた概念です。

またその後、米国で性暴力被害も社会問題となり、戦争と性暴力がPTSDのメインの基準になっています。

その他の基準について

B.心的外傷出来事の後に始まる、その心的外傷出来事に関連した、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の侵入症状の存在 
1.心的外傷出来事の反復的、不随意的、及び侵入的で苦痛な記憶 
 (6歳<子供:その出来事の主題または側面が表現された遊びを繰り返すことも)
2.夢の内容と感情またはそのいずれかが心的外傷出来事に関連している、反復的で苦痛な夢 
  (子供の場合:内容のはっきりしない恐ろしい夢のことも)
3.心的外傷出来事が再び起こるように感じる、またはそのように行動する解離症状(例:フラッシュバック) 
  (子供の場合:心的外傷に特異的な再演が遊びの中におこることが)
4.心的外傷出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する、内的または外的なきっかけに暴露された際の強烈なまたは遷延する心理的苦痛 
5.心的外傷出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する、内的または外的なきっかけに対する顕著な生理学的反応

トラウマ記憶は冷凍保存記憶

圧倒的な体験により、トラウマ記憶という特殊なメモリーネットワークが生じる
出来事の時の五感、感情、認知、思考、がまるで冷凍保存されたように残ってしまう
特徴として
1 無時間性、鮮明性
2 想起に苦痛な情緒を伴う
3 言葉になりにくい
C.心的外傷出来事に関連する刺激の持続的回避、心的外傷出来事の後に始まり、以下のいずれか1つまたは両方で示される
1.心的外傷出来事についての、または密接に関連する苦痛な記憶、思考、または感情の回避、または回避しようと努力
2.心的外傷出来事についての、または密接に関連する苦痛な記憶、思考または感情を呼び起こすことに結び付くもの(人、場所、会話、行動、物、状況)の回避、または回避しようと努力
D. 心的外傷出来事に関連した認知と気分の陰性変化、心的外傷出来事の後に発現したまたは悪化し、以下のいずれか2つ(またはそれ以上)で示される 
1.心的外傷出来事の重要な側面の想起不能(通常は解離性健忘によるで、器質的でない)
2.自分自身や他者、世界に対する持続的で過剰に否定的な信念や予想
3.自分自身や他者への非難につながる、心的外傷出来事の原因や結果についての持続的でゆがんだ認識 
4.持続的な陰性の感情状態
5.重要な活動への関心または参加の著しい減退
6.他者から孤立している、または疎遠になっている感覚 
7.陽性の感情を体験することが持続的できないこと
E.心的外傷出来事と関連した覚醒度と反応性の著しい変化。心的外傷出来事の後に発現または悪化し、以下のいずれか2つ(またはそれ以上)で示される。
1.人や物に対する言語的または身体的な攻撃性で通常示される、苛立たしさと激しい怒り
2.無謀なまたは自己破壊的な行動 
3.過度の警戒心
4.過剰な驚愕反応
5.集中困難
6.睡眠障害

F.障害(基準B,C,D,E)の持続が1か月以上

G.その障害は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、またはほかの重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

H.その障害は、物質またはほかの医学的疾患の生理学的作用によるものではない

PTSD発症のメカニズム


いずれ取り上げます。

評価方法

CAPS (clinician-administered PTSD scale)

Gold standard だそう。

IES-R (impact of event scale-revised)

自己記入式。過去によく使われたようで、過去の研究との比較で有用。

PCL-5 (PTSD checklist for DSM-5)

自己記入式。その名の通りDSM-5に対応していて、メリットとしてはcut-offがある

PDS (PTSD diagnostic scale)

自己記入式。重症度評価。
“再体験”に注目した簡易版も。

長期予後 


自然に良くなるケースも存在するが、3割弱は消えない・・

TIC (trauma informed care)

トラウマを念頭においたケア

みながトラウマを抱えている前提で、対応する、ということ。

アメリカでは2017年にTICの法律まで制定されているよう。さすがですね。
今回は詳細は省きますが、最後に大切な点として、
TICは、患者の恐怖を軽減すると同時に

治療者の燃え尽きも軽減しうる 


このへん、本当に重視していかなければならない、、と心から思います。