周産期ボンディング障害について
メカニズム
その女性が妊娠をどのように受け止めているか、は重要。
妊娠に対する否定的な感情、態度は、産後のボンディング障害に関連。
母親となる女性は 妊娠期から ボンディングを育む。
妊娠判明後、その妊娠をどのように受け止めるか、そして妊娠中にうけるケアがその女性にとって満足いくものかどうかが、ボンディングを育む過程で大きく影響する。
帝王切開分娩かどうか、も関連する。
母親の抑うつ状態とボンディング障害については多くの研究があり、その多くで相関がある。
ただその両者の因果関係は明らかではない。
産褥精神病よりも産後うつの方が、ボンディング障害に関連する。
産後の不安障害もボンディング障害と相関。また妊娠中の不安も産後のボンディングに関連。
PTSDとの関連は不明確。
子どもが女児であること、NICU入室率も関連。
神経質で気難しい赤ちゃんであるという評価が、ボンディング障害と関連。
子どものもつ気質的な特徴は子供の睡眠パターンにも関連し、ボンディングにネガティブな影響を与える。
低学歴、若年、貧困、未婚の母、などの社会背景もボンディング障害の予測因子。
子どもの数が多いほどボンディングがよい。
パートナーとの関係性が不良な場合、ボンディングも不良。
母親自身がどのようか養育をうけてきたか、また母親自身のパーソナリティも関連。
ボンディング障害には明確な診断基準がなく、また確立された治療法もない。
カンガルーケアなどのskin–to skin contactが有効という報告はあるが、明らかではない。
ソーシャルサポートが乏しいとボンディングが悪いという報告があり、ソーシャルサポートの充実は有効かもしれない。
現時点での治療としては、行動療法的なカンガルーケアを中心とした育児支援やペアレンティングトレーニングを行い、同時並行で個別の心理療法。
多職種連携を基本としつつ、個別のアプローチが必要。
急性期医療が重要。
一方で重度のボンディング障害で一定期間の治療でも改善がなく、将来的な子供の養育が難しいと判断される場合、子供にとっての最善の利益を優先し、里親制度や特別養子縁組なども考慮する必要があるかもしれない。
ただ、真の意味でのボンディング障害の治療は、親と子を離さないこと。
母子分離の状態だと、ボンディングの改善は期待できない。それどころか、長期間にわたる母子分離は子供への否定的な感情をさらに強める可能性がある。一時的の分離であっても、母親の自責感や自尊感情の低下の可能性を十分考慮すべきである。
安易に表面的な希望を聞くことは、親子関係へ悪影響を与える可能性もある。
パートナーへの支援も不可欠。
ボンディング障害、とても難しい問題だが、世代を超えた影響が生じる病態であり、しっかり対応していく必要がある。