帝王切開
帝王切開で生まれたー、帝王切開になったー
よく聞きますし、ご自身が帝王切開で産まれた、であったり、ご自身がされた方もいると思います。
また今妊娠中だったり、これから妊娠する可能性がある場合、誰しもが、帝王切開を受ける可能性があります。
帝王切開について、妊婦さんみんなが知っておいてほしいことをざっくり紹介します。
帝王切開術とは
名前の由来とかは検索して下さい。
要は、開腹して、赤ちゃんを分娩させる方法です。帝王切開分娩とも言います。
どういう時に?
基本は急いで分娩にしたい場合。
胎児の心音が下がってて、苦しいよーってなっているけど、回復があんまりで、またすぐには分娩にならなそうな時。
もしくは、母体側の問題で早く妊娠を終わらせたい場合。
赤ちゃんは 異物 ですが妊娠期間を通じて胎盤を通じて養っていきますが、急激に全身の循環に影響して、血圧が上がって脳出血を起こしたり、痙攣したり、他様々な症状を呈することがあり、その場合は妊娠を終わらせる、つまり赤ちゃんを分娩させることで、お母さんで起こっている異常が改善の方向に向かいます。赤ちゃんを小さいうちに産ませてしまうことに罪悪感を抱くお母さんも多いですが、何よりお母さんが赤ちゃんを世話できることが1番なので、必要な場合は、帝王切開分娩が良いです。
他は前の分娩が帝王切開の場合。これは、前回帝王切開をしていると筋肉の塊である子宮が一度切開されることで、その部分の筋層が断裂しかさぶたのようになっているため、その後の分娩時の陣痛で中の圧力が上がると子宮が破裂することが心配だから。実際私自身は既往1回帝切の分娩は数えていませんが100回以上は対応していると思いますが、また飛び込み分娩での既往2回以上帝切なども数回ありますが、私自身が子宮破裂に当たったことはありません。とはいえ、起こると胎児は助からない可能性も高く、母体も命に関わるので、当たったことのある先生はもう二度と既往帝切の経膣分娩(TOLAC)はしない、という先生もいると思います。そもそも受け入れない施設が増えていると思います。勤務している施設で一度あったケースは、他院で過去に子宮底部(子宮の頭側、筋肉が厚いところ)を切開された方が、妊娠中期頃に破裂で来ていることがありました。
方法
基本的には腹部の下のシワに沿って横に切開して、腹腔内に入ったら胎児が入った子宮が大きくあるので、その下方の筋肉が薄い部位を切開して赤ちゃんを娩出します。膀胱が近接しているので、膀胱を剥がすのが重要です。
帝王切開の手技自体は、開腹して、子宮切開して、児を娩出して、胎盤を娩出して、遺残がないことを確認して、子宮の筋層を縫合して、閉服という、非常にシンプルな手術です。
初回帝切や予定帝切などは、非常にやりやすいことも多いです。
一方で、非常に難易度の高いケースもあります。
帝王切開術は難易度の幅が非常に広い手術です。
多発筋腫があったり、内膜症で癒着していたり、過去の既往帝切の影響での癒着が高度であったり、胎児が23-24週など非常に小さかったり、また緊急度など、また分娩進行から緊急帝切の場合児頭の下降度など、様々な因子で一気に難しくなることがあります。
麻酔について
基本は腰椎麻酔という、下半身の麻酔です。
下半身の痛覚がなくなり、動かなくなりますが、触られれている感覚は残ります。
何かされている感覚はあって、赤ちゃんが産まれて、第一啼泣も聞くことが出来ます。
通常は赤ちゃんと対面の上で、赤ちゃんだけ新生児かの先生に連れられて先に部屋に戻ることになると思います。
クリニックだと横にそのままいるので、泣いている姿を見ていることもできるかもしれません。
稀に、痛みが残っていることもあります。その場合は、遠慮せず伝えて下さい。
緊急時や状況によって、全身麻酔が選択されることがあります。
必要な状況であり、仕方ないと割り切る方が良いかもしれません。
少しだけ脱線ですが、無痛分娩について、日本でも進めるべきだとの意見が聞かれます。 もちろん女性の痛みを取るのは、大事なことです。 ただ何点か付け加えると、硬膜外麻酔を入れても無痛になるわけではない、痛みの間隔がわかりづらくなりいきむタイミングがわからなくなったり、分娩は一般的に1.5倍程度になる印象、微弱陣痛になり促進剤が必要になるケース、日本のある施設でほぼ全例行っているようですが、半数以上機械分娩が必要になる、などデメリットも多い印象です。そもそも急な分娩に常に麻酔科が対応できる状況になく、行う場合も麻酔科が硬膜外のチューブのみ留置し、その後の管理は産科医が行う、などが多く、産科医としてはなれない管理を強いられたり、上記に述べたデメリットもあり、なかなか難しいのかなと感じます。
帝王切開のまとめ
妊娠中、特に分娩中は、数分後には状況が変化し、いつでも帝王切開になる可能性がある。
帝王切開は開腹手術であり、もちろんリスクがある。その後の分娩にも影響する。
状況や麻酔方法によっては、思い描いていた分娩にならない可能性もあるが、胎児や母体の死亡率をすごく減らす重要な救命のための手術であり、立派な分娩方法のひとつ(お産は命懸け)。