新・周産期メンタルヘルス
この分野について。
もともと周産期に関わり、その後メンタルに関わった立場で感じること。
そもそも、メンタルヘルスは周産期だけの問題ではない。
ただ周産期にはホルモンのダイナミックな変化による影響、仕事や家庭などの環境変化による影響、新生児の育児に関連する影響などが同時多発的に生じるため、メンタルの変動は多くの女性が経験すると思われる。
産後うつとよく言われるが、実質は適応障害のような状態が多いと思う。
もともと健康な女性の場合、ストレスフルな環境で適応障害を生じたとしても、改善する。
現代の日本の育児環境からみると、サポートが重要で、そのためには、産科での1ヶ月検診までのフォロー中でのEPDSなどからの拾い上げ、そこから保健師など行政に繋げ利用可能なサポートを利用し乗り切るというのが多くの場合は有効だと思う。
ただ、実際は、メンタルヘルスにおいて問題がある人が多く存在し、その状況で周産期、産後に入ることで、問題が大きくなる。
そして意外な程あっけなく、終えることがある。
そしてその数が、周産期医療に関わる人間が自らの生活の多くを犠牲にして助けた産科合併症よりも、、多い。
周産期医療自体がものすごく頑張り続けた影響で、多くの人は妊娠出産の実際がわからない。
母体にとっても胎児にとっても、妊娠出産は命懸けである。
多くの人が聞いたことはあるけど、まさか自分がと感じている人が多いと思うが、突然くる。
もちろん今の日本では、ほとんどの場合はその前に対応し、事なきを得ることが多い。が全てではない。
このような状況で、妊婦のメンタルへの対応は、はっきりいって、ほとんど出来ていない。
そして、周産期、特に産科では、無事出産が終わると、産後の合併症のリスクが軽減すれば、めでたしとなる。
もともと精神科などに通院している場合、明らかにフォローが必要な場合、産科側も精神疾患合併妊娠としてしっかりフォローする。
しかし日本では、精神科受診の敷居の高さからか、受診しているべき状態でもしていないことは多い。
そして、また産科側でも、もともと通院していない方に、本人からの訴えがない限り、なかなか介入しないと思われる。
そもそも妊娠中に薬を飲むことへも抵抗があるし、また同意もしない人も多い。
妊娠中に明らかな精神状態の変化があれば、その時は産科はなんとかする。
しかし外来中、また分娩のための入院時のみだと、本人の訴えがない場合、そのまま見過ごすことは多いにあり得る。
EPDSも、そもそも自己記入式であり、介入を望まない場合、事実と異なる記載をする可能性はある。
メンタルの問題は、周産期医療の急性期感覚の中で、しっかり拾い上げるのはなかなか難しい。
また様々な事が起こるため、許容される反応の範疇と考えられる可能性もある。
メンタルの立場で。周産期は増悪因子の一つであると思う。
通院中の場合、注意してフォローされ得る。
しかし新規の場合、仮に産科で拾い上げられて紹介となった場合にも、周産期の意識する時間感覚とはずれがあると思われる。
ただ拾われれば、良い。
現在産科の施設は減少し、一方で総合病院で精神科がない、または十分ではない、という点も問題かもしれない。
ただやはり1番は、拾い上げることかと感じる。
主に助産師になるかもしれないが、少しでも懸念点があれば心理職に相談できる環境、そもそもの懸念点を拾い上げるための項目、また1番は、メンタルの問題がある前提の対応などが、周産期メンタルヘルスの領域を改善していく上では必要なことかもしれない。